2016/01/23

「MARS」のドラマが本日23日深夜24:55(厳密に言いますと24日の日曜0:55)から放送されます。
関東ローカルで時間帯も遅いので、観られない方もいらっしゃると思いますが、可能な方はどうか御覧になってみてください。

「MARS」は別冊フレンドで少女漫画として私が最後に描いた長編作品でしたが、
最初の案では60~120Pの読みきりとして考えていた作品で、連載用に考えていた話ではありませんでした。
(主人公のキラが零という少年を知るうちに、破天荒で自分とはまったく違う性質の彼に次第に惹かれていき
最後は一枚の絵として零の記録を残すという話でした)

当初は連載用に他の話を用意していたのですが、当時の担当者がその案にあまり乗り気でなかったため
急遽、読みきり用としての作品だった後の「MARS」(この段階では題名すら決めていませんでした)のエピソードを
膨らませていったら、それなりの長編になりそうだったので、それでとりあえず描き始めてみたという経緯でした。
御蔭様で1996年の開始から2000年までの間、読者の方々に支えられて、何とか無事に描き上げる事が出来ました。

※因みに、その没となった企画の作品は、後に青年誌である週刊モーニングで発表する事となりましたが、
  もちろん別冊フレンドでは主人公達を十代の少年少女として、ある程度少女漫画補正を配した作りにしてはいたのですが、
  多少刺激が強すぎるのでは、という当時の担当者の意見もありましたので、当初の物をさらにソフトに改変するよりは、
  別の物に切り替えた方が話が早そうだと思い、それで読みきりだった後の「MARS」に着手したという次第です。
  その御蔭と言いますか、その没作品は2001年から週刊モーニングで「ES」として、かなり自由に描かせて頂けたので、
  結果オーライという事だったのかもしれません。

「MARS」自体も当時、少女漫画でどの辺りまでが許容範囲なのかと、かなり手探りで描いていた作品でしたので、
それなりにハードな部分もあり、映像的にも演者の方にも、それ相応の負荷がかかったのではと思います。
御苦労された分、良い結果となるようお祈りしております。

蛇足ではありますが、2005年より連載開始していた「チェーザレ」のイタリア語翻訳本発表のために、
2007年にイタリアに招待されたのですが、その時の講演会でイタリアの読者の方々から、最後の方で「MARS」についての
質問を受け、「零のモデルはいるのですか?」との問いに
「特定のモデルはいませんが、何となくイタリアの男の子をイメージして作りました」と答えたら、
会場が大爆笑になってしまいまして、多分零が無類の女好きという設定だったためだと思われます。(苦笑)

ついでに零の苗字の樫野は、ミケランジェロの「カッシーナの戦い」から、と言いたかったところでしたが、実は
当時我家のソファが、イタリアの家具メーカーのカッシーナだったので、それを捩ってカッシーナ→カシノとしたのだと
小さな裏事情も暴露させて頂きました。
因みに、主人公の少女キラには二重の意味がありまして、英語だとkillerで殺人者等のネガティブな意味となりますが、
イタリア語では光や明かり等の意味を持つchiaro、キアロを捩った女の子の名前chiara、キアーラから名付けました。

当時「チェーザレ」はイタリアで発売されたばかりでしたので、会場に来ていた読者の大半は「MARS」のファンの方々だったと
後でお聞きして、かなりの数の方がいらしていたので、「MARS」がイタリアの読者にもとても愛されていた事を知り、
私自身ちょっとした驚きでした。
台湾でも連載時、招待された際に熱烈歓迎を受け、2005年には「MARS」のドラマが作られましたが、
この時もよくここまで作りこんだものだと驚くと共に、深く感銘を受けた記憶が今も蘇ります。

漫画というツールを通して、言語も文化も違う人々と心が繋がることが出切る事を本当に嬉しく思います。
作品を通じて関わってきた、たくさんの方々に改めて感謝申し上げます。