昨日10月1日、松屋銀座1F「スペース・オブ・ギンザ」にて
ロジェ ヴィヴィエ(Roger Vivier)とのコラボイベントのサイン会を行いました。
イタリア、フランスでは2000年代に入ってからサイン会を行っていたのですが、日本では、’80年代に三省堂さんでやらせて頂いたのと
小学館の雑誌のイベントか何かで、原宿で他の作家さん達と参加したその二回くらいだったと記憶していますので、
私にとっては本当に久しぶりのサイン会となりました。
皆様においては天候の優れない中、会場へお越し頂き本当に感謝しております。
激励の言葉やプレゼント等も頂き、大変楽しい時間を過ごさせて頂きました。
この場で改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
また、松屋銀座での原画展は10月4日まで開催しておりますので、興味がおありの方はどうぞ気軽にお立ち寄りください。
そして9月30日に漫画「マリー・アントワネット」に続いて、その副読本ともいえる「マリー・アントワネットの嘘」が発売されました。
塚田有那さんによって我家で三回にわたりインタビューを受け、アントワネットやルイ16世が長年どういう誤解曲解を受けていたか、
その原因や経緯についてお話しした事をまとめたものです。
漫画は160Pの単発と決まっていましたから、私としては彼らの人生をダイジェスト版にはしたくなかったので、
160Pで切り取れる場面をあれこれ模索してはみたのですが、
当初はアントワネットの裁判から断頭台までの構想もありましたが、そうすると舞台がタンプル塔となってしまい、
元々ヴェルサイユ宮殿側からは、ヴェルサイユ宮殿やプチトリアノンを描いて欲しいというオファーから始まった話ですので
また、革命側の描写や此処に至るまでの状況説明が必要となる事から、分量的にも厳しいものとなる事が予測され、
結果、プチトリアノンでようやく自分らしい生活を手に入れたアントワネットの回想話として、ルイ16世との出会いから王太子妃として
歩み始めるエピソードに焦点を当ててみました。
そのためにルイ16世の一次資料として、ジャン=クリスチャン・プティフィスさんの著書「ルイ16世」を、
また、アントワネットはシモーヌ・ベルティエールさんの伝記「不屈の王妃、マリー・アントワネット」(邦訳はまだされていない)を
グレナ社の稲葉さんに翻訳してもらい、それらをベースに人物造詣を深めていきました。
また国境の街、ストラスブールでのアントワネットお引渡しの場面では、意外な人物の証言が文献として残されており、
これには大変助けられました。
御本人もモブとして漫画作品に登場しておりますが、ヨハンと呼ばれていたドイツ人留学生で、後に偉大な文豪となられる方です。
ドイツ史、ドイツ文学に詳しい方はすぐにお解かりになったと思います。
ラストはルイ15世のモノローグで終わりますが、「いや、終わるんだよ」と
大半の読者の方が、そう心の中で呟かれる事を想定して締めくくられるよう構成させて頂きました。
「アントワネットの嘘」はヴェルサイユ宮殿もグレナ社も関係なく、日本での単独の企画です。
漫画を読んだ後にこれを読まれて、さらにまた漫画を読むと感じ方に微妙な変化が生じるかもしれません。
今回の制作の舞台裏やヴェルサイユ宮殿のバックアップ体制、フランス側の編集者や関係者のコメントも掲載されており
他に協力を申し出てくれたアントワネット協会や、日本の京都服飾文化研究財団など各方面への取材も含めて
大変興味深い物となっておりますので、よろしかったらこちらも手にとって頂けたらと思います。
また大先輩である萩尾望都さんとの対談も実現され、わざわざ我家にまでお出でくださって、お忙しい中大変恐縮致しました。
もう十六年も前になりますが、お食事に誘って頂きそのノリでカラオケまで御一緒させて頂いた思い出があるのですが、
あの頃と変わらずパワフルで未だ衰えぬ創作意欲にさらなる感銘を受けました。
お話しできて大変楽しかったです。本当にありがとうございました。
そして、今回「アントワネットの嘘」の出版にあたって、御世話になった講談社第一事業局次長の原田隆さんに改めて御礼申し上げます。
誠に残念ながら、原田さんは先月、9月23日に本の発売を待たず急逝されてしまいました。
校正の最終段階で我家にまで足を運んで頂き、担当編集者である北本と共に深夜まで文章の添削にお付き合いくださり、
帰り際に笑顔で去っていったのが最期に見た姿となりました。
言葉のニュアンスを大事にされる方で、これが御一緒させてもらった二度目のお仕事でしたが、
とても信頼できる方でしたので、本当に悔やまれてなりません。
心より御冥福をお祈り致します。どうか安らかにお眠りください。