明けましておめでとうございます。
御挨拶がすっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。
読者の方々、また旧年中、御世話になった方々から、新年の御挨拶を頂きありがとうございました。
さらに馴染みの読者の方々からは、1月6日の私の誕生日にもお祝いメールや猫の写真、手紙等を送って頂き、
大変嬉しかったです。とても楽しく拝見させて頂きました。
この場を借りて、御礼申し上げます。今年もどうぞ宜しく御願い致します。
さて「チェーザレ」11巻が今月22日に発売されます。
今回は通常の物とは違い、特典としてチェーザレのポストカードと、メタル製の栞が付いてくる限定版となっております。
値段は消費税込みで約1600円と、単行本としてはかなり高くなっておりますが、特典である栞とポストカードのクオリティが、
大変良質の物に出来上がっておりまして、私も現物を見た時にちょっと驚いてしまいました。
栞の方は金属製という事もあって、ルネサンス風ではなくアールデコ風にデザインしてみたのですが、
細かい所まで再現して頂き、個人的には大変満足しております。
ポストカードの方は、2014年にPOLAのCM用に描き下ろしたチェーザレの絵を選ばせて頂きました。
こちらもデザイナーの方が、かなり凝ったレイアウトを考えてくださって、POLAの時とはまた印象が違って見えて
その仕上がりにとても感激致しました。
重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。
そして、去年11月21日に行われたペネロープさんとの対談に御越し頂いた皆様ありがとうございました。
客席にはフランスの方々をはじめ、日本の漫画業界の関係者、イタリアの方々等、国際色豊かな皆様にお集まり頂き、
通常の日本では体験できない雰囲気を味あわせて頂きました。
ペネロープさんからは、フランスのBD(バンド・デシネ)事情等を聞けて、中々興味深かったです。
(最後の食事会では、すっかり遅くなってしまって慌てて帰ってしまったため、最後にきちんと御挨拶が出来ずに
申し訳なかったです)
また、講演開始前にBD情報誌KABOOM(カブーム)のインタビューも受けたのですが、
「チェーザレ」について、とても鋭い視点からの質問を受け、その読み込み方に私の方が恐縮してしまいました。
KABOOMの質問で特に面白かったのが、
「チェーザレ」という作品は、ヨーロッパ人のために描いているのか?日本人のために描いているのか?と、いう質問でした。
「日本で出版しているので、当然日本の読者に向けて描いている」とお答えしましたが、
でも題材はヨーロッパの世界観ですので、描く以上は徹底したいという姿勢でやっている、と伝えると大変喜んでおられました。
そして、何故徹底するのか?という問いに対しては、
チェーザレ関連の話では、エピソード自体を膨らませて展開されている話が先行していたため、
「まずは、敢えてスタンダードな物を作ってみようと試みた。ドキュメンタリー作品にもドラマ性が十分あるように,
派手な演出に頼らなくても、楽しめる作品を作る事は可能ではないかと思った」
と伝えると、非常に納得されていたように思います。
また、チェーザレのような悪人(ヨーロッパ、特にフランスでは悪行三昧の悪魔のような人間として伝えられている)に
何故焦点を当てたのか?という問いには、
まずはルネサンス期という時代が、銃器の威力がまだ小さく、戦力の差よりも人間力の高さが戦況に反映するという
時代であった事が個人的には面白く感じていたという事。
それを踏まえた上で、その時代の徒花とも言えるチェーザレに焦点を当てたとも言えるのですが、
一番興味を引かれたのは、やはり彼を見る側の違いによって、賛否が極端に分かれていた事だった、とお伝えしました。
これに関しては去年、フランスに招かれた時も、インタビューで何度も聞かれていた事でしたので、
その時には、通訳を交えてではとても詳細に伝える時間がなかったため、簡易的な例え話として、
「例えば、インパラ(アフリカの草食動物)のドキュメンタリーを見ている場合、
インパラがライオンに襲われそうになった時に、上手く逃げおおせれば見ている人はきっと胸を撫で下ろすだろうし、
また、ライオンのドキュメンタリーを見ている場合、お腹を空かせているライオンが、苦労してインパラを仕留めた際には、
よくやった!と思わずエールを送りたくなるだろう。
視点の切り替えとはそういう事であって、貴族と言えど生き残りをかけた当時の厳しい状況下では、
物事自体を善悪で結論付けるのは、決して正しい判断ではない」
そう答えた事を、そのままお伝え致しました。
また、講演会で印象深かったのは、ペネロープさんの
「読者の事は考えず、自分の作品を丁寧に仕上げる事だけを優先して考えている。」という発言で、
さすがBDの国、フランスだなと感心しました。
日本の漫画業界においては、漫画家がまだまだ下請け的な立場にある事も多く、色々と考えさせられました。
日本では漫画家は原稿を描いてるだけでは生活が成り立たず、
(基本、原稿料はアシスタントの人件費等、作品を作り上げていくための必要経費としてほぼ手元には残りません)
結果、単行本を出版社に売ってもらって、やっと収入を得るというシステムになっていますから、出版社との関係は密接で
BD作家のように単独のアーティスト(印刷物の印税ではなくイラスト自体が美術品として売買されている)として
成り立っているフランスとでは、絵を売るという概念自体が違っているのでしょうね。
こういった文化、概念は、さすが印象派が誕生した国だと思います。
そういった諸々を含めて、このような有意義な時間を与えてくださった、アンスティチュ・フランセ東京の方々に
改めて感謝致します。有難うございました。
Bonne année! A biento’t! Merci beaucoup.
それではまた。