2007/10/07

ようやく涼しくなり一息付いていたら、今度はうっかり風邪を引いてしまいそうな勢いで、相変わらず気の抜けない

毎日を送っております。

モーニング誌上でもお知らせしましたが、今回「チェーザレ」がイタリアで出版される事となり、関係者各位にこの場を借りて

心よりお礼申し上げます。

イタリアでの発売は去年より話自体は進んでいて、出版に際してのイタリア語翻訳について、結構頭を抱えていたのですが、

翻訳を担当してくださった方が、日本在住のイタリア人の方で非常に綺麗な日本語を話され、また漢字も達者に

使いこなされる方なので、原書のニュアンスを壊さぬようにと、大変気を配ってくださり、無事出版という形になりました。

本当に感謝しております。

日本語には敬語という表現方法があり(尊敬語・謙譲語・丁寧語)、世界の中でもここまで多様に言語を使い分ける民族も

そうそういないのではと思われます。「チェーザレ」の本編の中では、この敬語が乱れ飛んでいるため、大変御苦労なさったとは

思われますが(日本人の私でも使い分けで頭を抱える事がある)でもイタリア語は日本語に近いものがあったりしまして。

実はイタリア語には日本語同様敬語が存在します。

また大変面白いのが、一人称ニ人称三人称によって動詞も変化していくという物で、主語は伏せたまま動詞の変化で

誰の事を話しているか判断するという表現方法なのですが、これは慣れるまでかなり混乱します。

後、冠詞も実に数多く使い分けられており、単語を目にする度、毎回頭文字と語尾を慌てて確認する有様です。

何故ここまでイタリア語の表現が多様化したのかと言うと、歴史的に長きに渡り近隣国から侵略されたり、また自国も分裂を

繰り返していたため、言語の扱いに関して細心の注意を払うようになり、それで単刀直入ではなく暗号のような言い回しが

根付いたのではないかと言う事のようです。

因みに日本語の「久しぶり」や「とりあえず」といった言語はイタリア語にはなく、そのために日本語では「久しぶり」の一言で

済むところを、イタリア語では「長い間きみとは顔を合わせていなかったね」となるので、吹出しの大きさも今後は考慮しなければ

ならないかもしれません。とりあえず(この「とりあえず」もニュアンスで伝えようとするとかなり難しい。妥当なイタリア語表現は

「まず、最初に」とかでしょうか)今年に入ってからは、吹出しが日本語用のみに縦長くなるのを避けていたのですが、

まだまだ改善の余地はありそうです。恐るべしは日本語という事なのでしょう。

そういった微妙な差異が理解できるため、今回のイタリア語版「チェーザレ」の翻訳には、翻訳してくださった方の拘りが感じられ

この本がイタリアの読者にも上手く伝わればと心から願っております。

といった訳でVirtu32ですが、チェーザレが使い分けていたように、貴族と庶民では表現方法は著しく異なります

そうでなくともローマとトスカーナ地方ですから、同じイタリア半島でも理解は困難と思われ(日本でも地方、例えば九州の人間と

東北の人間では、スムーズに会話はできないはずで、それを補うために標準語という共通語が誕生しました)

そのために当時のイタリア半島では、イタリア独自の共通語(いわゆる日本での標準語と同じような物)が存在していまして

中世ヨーロッパの諸外国間での標準語に当たるのはラテン語でしたが、それとは別にイタリア半島の人間達は、通常この

共通語を使って会話していたようです。(このラテン語と共通語を理解できるのも、それなりの教育を受けた人間だけでした)

そこでキー・パーソンとなってくるのがアンジェロという訳です。

彼は本編ではかなり間の抜けた感じのキャラクターに思われていますが(私の描き方に難があるのかもしれませんが)

実は彼の役付けとして、トスカーナ地方の言語だけではなく、職人達の専門用語にも精通しており、さらにチェーザレ達貴族との

会話もこなしてしまう(つまりイタリアでの共通語にも長けている)本当は切れ者という事でして。

それは彼が育ったフィレンツェという土壌のお蔭なのですが、まあ今回それは置いといて。

(それはVirtu34を御覧になればわかるとは思います)

要するにアンジェロはチェーザレの通訳として成り立つ人間で、庶民と貴族、両方の状況を把握できる、ある意味大変重要な

キャラクターであると言う事なのです。

貴族の立場からだけでは到底描き切れる世界ではないので、このアンジェロというキャラクターの背後には当時の民心と

いう物が存在していると思って読んで頂けると幸いです。

蛇足でありますが、日本のコーヒーショップでは、カフェ・ラッテとカフェ・オ・レが同じ店で売られているらしいのですが

イタリア人はこの事に驚愕するそうです。(おそらくフランス人も)

カフェ・ラッテ(伊)もカフェ・オ・レ(仏)も、実は日本語に訳すと牛乳入りコーヒーで、同じ物がイタリア語とフランス語で

売られている、しかも値段が違っている、何故? という事らしいのですが、日本人の私にもその理由ははっきりと説明できずに

今日に至っております。

多分、おそらくなのですが、値段の違いは使用しているコーヒーの入れ方か、豆の種類等に違いがあるのかも・・・

などと適当な返答をするに留まっています。

※さらに蛇足で今更なのですが、思い出したので参考までに。

チェーザレの発音ですが、イタリア語読みする場合はチェにアクセントを付けて発音します。カエサルと同じアクセントですね。

日本語読みだと、フラットに呼ぶ方が発音しやすいので、ついそのように発音してしまいがちですが、

イタリア語読みを意識するならチェを強く発音するのがベストと思われます。

また二巻の巻末で触れたように、ボルジアもボルジャが正しいイタリア語発音で、これも何故かボルジアが日本では

定着していたため、ボルジアで統一させて頂きました。

因みに彼らの母国スペイン語発音では、ボルジアはボルハとなります。

日本=チェーザレ・ボルジア  イタリア=チェーザレ・ボルジャ  スペイン=セサル・ボルハ  という感じです。

※※※上記で名前の呼び方は、チェザーレも可なのではないかと書きましたが、これは完全に間違いのようです。

日本でたまにそう呼ばれている現象があるというだけで、正しくはチェーザレ(チェにアクセント)です。

フランス語発音だとセザールとなるので、その関連から誤解が生じたのかもしれません。

それから、当時のイタリア半島内で使われていた共通語についても追記させて頂きました。