2007/10/20

「チェーザレ」四巻分の再考が何とか終わり、ちょっとだけ一息付いている所です。

今回は原さんと編集者二名に我が家へ来て頂き、頭を突き合わせながら半日かけて作業を行いました。

前回まではお互い個別に再考を行いながら、電話で連絡を取り合うような形を取っていたのですが、

(それで何とかなると思っていたもので)でもそれでは、どうしてもケアレスミスが出てしまうという事で、今回はこのような

形で作業を行う事に致しました。本当に皆様、ご苦労様でした。

再考といっても誤植等は当然のことながら、その大半は時間系列と登場人物達の続柄だったりしますが、

例えば日本語には「伯父」「叔父」という同じ意味でありながら、微妙に意味合いが違う単語があり、

「ラファエーレ・リアーリオの叔父のジローラモ」と書いた場合は、ラファエーレの親はジローラモにとって年上の兄弟と確定される

のですが、これがもし年下の兄弟からラファエーレが誕生しているなら、そこは伯父と書かなければならない訳でして、

ここが日本語(特に漢字の持つ意味合い)の難しい所で、こういった続柄に関しての単語は、詳細を極める事が出来る反面、

間違ったデータを表示する事にも成り得る、諸刃の要素を兼ね備えているという事です。

因みに今の段階でラファエーレ・リアーリオは、ジローラモ・リアーリアの姉にあたるヴィオランテから産まれた事になっているので

本編ではラファエーレにとってジローラモは叔父という続柄で確定させて頂きました。

こういった些細なようでいて実は重要な記述は、歴史物にとっては御座なりに出来ない要素でして、そのためには

執筆にはどうしてもある程度の時間を要してしまいます。

これは決して資料が不足しているという事ではなく、実を言うと資料自体は溢れるほどあるのですが、問題なのは

その大半が裏の取れない信憑性の低い物ばかりだという事なのです。

その数多くある資料の中から、その人物達の詳細データを割り出し、最も信憑性の高いと思われる物を厳選する事自体

大変な作業で、これは私を含め原さんは当然の事、担当編集者二名も本当に奔走しているような状態でして、

(とはいえ私は自宅で待機し届く資料を読み漁り、本編にとって最も適切と思われる物を選別していくだけですが)

こういった中から、焦点を絞った文献に標準を合わせて物語を構築していっているのですが、登場人物達の続柄、また

その年毎の所在場所、年齢等、こういった事を確定しながら作品を仕上げていくのは本当に骨の折れる作業です。

時間はかかるとは思いますが、読者の皆様には最後までお付き合いして頂ければ幸いと思います。

(気持ちは存命中に描き切るつもりですが)

とりあえず11月発売予定の四巻の最終工程が終わった事のお知らせでした。

※前回で触れたブリューゲルとラファエッロの絵画資料ですが、どの絵画が参考にされたかは掲載号を御覧になった方は

もうお分かりになったと思われます。

ブリューゲルは祭りの場面の参考に、(ブリューゲル(父)はルネッサンス末期に現れた画家ですが、晩年の庶民に焦点を当てた

作品は実にユーモラス且つ精密で興味深く、そのモチーフも人物像その物ではなく、あくまでも庶民の生活を主役にしています。

当時は貴族や権力者に依存する職人が大半でしたので、その中で庶民の生活を淡々と描き続けたブリューゲルは、

大変珍しいタイプの画家だったと思われます)

そして古代復興の台詞の場面では、ラファエッロの「アテナイの学堂」を参考にさせて頂きました。

ラファエッロ作「アテナイの学堂」はラファエッロの作品というよりは、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロといった、ルネッサンスの代表的な

芸術家達の集大成とも言える作品かもしれません。

人物達の重厚さと生命力はミケランジェロ、構図の美しさと繊細さはダ・ヴィンチ、そういった先人達の影響を反映しながらも、

ラファエッロらしい華やかさと官能的な美しさはちゃんと表現されているように思えます。

その華やかさと官能美も、かつての師匠ペルジーノ(ダ・ヴィンチとフィレンツェ時代、師匠であったヴェロッキオの工房で寝食を

共にしていた)からの伝授であったであろうと思われます。

因みに本編の古代の偉人達は、(画面手前に描かれている)

右からアルキメデス、ピタゴラス、プラトン、アリストテレス、ソクラテス、カエサル、左下ヒポクラテス、となっています。

どれも現存している彫像頭部を元に再現してみました。(アルキメデスのみ想像画より引用)