無事イタリアから戻って参りました。
ヨーロッパから戻ってくる度、日本の街並みが工場のように見えて、(主に東京の街ですが)
「ああ・・・またシステマティックな毎日が始まるんだな・・・」と、つい溜息をついてしまいます。
この光景を見る度に、日本は戦争で何もかも失い、古き良き物を全てかなぐり捨てて、経済に特化してきた国なのだと
思い知らされます。お蔭で物質的には大変豊かな国にはなりましたが、その反面、ゆっくり立ち止まって物事を考える事すら
許されない、そんな強迫観念に駆られるのが常になってしまったような気がします。
漫画もその経済から産み出された物かもしれないと、ふとそんな事を思う今日この頃です。
漫画は元はアメリカから輸入された文化でしたが、その形態は先人である漫画家達の努力と感性により切磋琢磨され、
今や日本独自の文化「MANGA」となった訳ですが、いつだったか外国の方に漫画をどのようなサイクルで仕上げているのかと
質問された事があり、週刊の場合は一週間毎に原稿を仕上げ、それを毎週読者アンケートで査定され、評判が悪ければ途中で
終了させられると伝えたら、それはどこの残酷物語だと驚愕された事があります。(笑)
日本では漫画の本質は芸術作品などではなく、あくまで数百円で取引される商品であり、定期的に確実に掲載されなければ
ならず、それもお客である読者にたまに酷評されたりする事もある訳で、そういった環境が今日の日本の漫画の水準を
引き上げたのも事実ですが、まあ過酷な事には間違いないでしょうね。よくも悪くも経済の賜物と言えるのかもしれません。
そして、片やイタリアですが、政府が国民に働きすぎるなという条例を出しているとの事で、
就業時間が終わっても、自分の仕事を切りのいい所まで続けていたりすると、同僚達から冷たい視線を浴びるらしく、
仕事よりも家族との関わりを大切にするように!というのが国民に対するイタリア政府の方針のようで、
面白いほどに日本と正反対で、思わず苦笑いしてしまいます。
(これも見方によっては実にシステマティックで、結局人間は組織でなくては生きてはいけない生き物なのでしょう)
これは、イタリアにはローマ帝国時代からの遺産があり、その文化のお蔭で観光客で潤い、経済に頼らなくても
十分成り立っていけるからなのかもしれません。
先程、私は日本は文化を捨て経済に特化したと書きましたが、今回イタリアへ行って改めて知った事は、
漫画がすでに日本の文化として認知され、受け入れられていると言う事でした。
それは私が思っている以上に真摯な物で、本当に熱烈な歓迎を受け正直驚きました。
講演会やサイン会、また雑誌、新聞のインタビューでは、とても深い質問を受け、その誠実なアプローチにはかえって私の方が
恐縮してしまう程でした。またこちら側の取材に関しては、大変協力的に接して頂き本当に有り難く思いました。
成熟した文化は秀逸な物ばかりでなく、ある意味弊害を生み出す事もあったりしますが、これからも表現の自由を損ねることなく、
より良い形で日本の漫画が、世界で受け入れられる事を心から願っております。
ここから先の報告は長くなりそうなので、また後日改めてお伝え出来ればと思いますが、
今回イタリアでこのような交流会を持てたのも、全ては日本の読者の支えがあってこそだと思っております。
出来ればいずれ日本国内でも、このような読者との交流の場が持てればと、私自身切望してやみません。
本当にありがとうございました。
Signore e signori, grazie per il vostro sforzo.
Molto lieta di conoscere voi tutti.
Alla prossima volta. Ciao!