2017/01/08

あけましておめでとうございます。
去年は私にとって本当にいろいろな事がありすぎて、大変目まぐるしい一年となりました。
一作年から手掛けていた、フランスの出版社グレナ社との「マリー・アントワネット」がようやく完成し、
年が明けてやっと冷静に振り返って見る余裕が出来た次第です。
大変貴重な経験をさせて頂き、今回の仕事を与えてくださったヴェルサイユ宮殿と
グレナ社には改めて感謝しております。
また、フランスのロジェ ヴィヴィエ(Roger Vivier)とのコラボとして、作品を提供させて頂いた事も
重ねて御礼申し上げます。

去年は「MARS」の映像化もあり、少女漫画時代からのファンの方や新たにファンになったという方々から
暖かいメールやお手紙を頂き大変嬉しかったです。
また、当時連載していた別冊少女フレンド編集部に、ずっと保管されたままになっていたファンレターが
この度見つかり、ようやく私の手元へと届きまして全て読ませて頂きました。
中国や台湾、海外の方からのお手紙も含まれていて、本当に懐かしく連載当時が思い出され胸が熱くなる思いでした。
大変遅くなりましたが、この場を借りてお詫びすると共に改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました。

もう一つ、今回の映像化の御蔭と言いますか、知人から「MARS」の台湾版も観てみたいと言われて、
我家に保管してあった台湾版「戦神~MARS~」のDVDを貸したのですが、その方から後日
「ノリックが特典映像に出てましたよ!」という報告を受けて驚いて確認してみたところ、
本編後の特典映像にノリックこと、阿部典史選手が出演していた事を知り、驚きで思わず画面を何度も
見直してしまいました。
私自身の疎さと言いますか、本編以外に特典映像なるものがあるなんて長い間気がついてなくて
今回この知人の方から教えてもらって初めて知ったような有様でした。
(因みにこの知人である御夫婦はかつてチームとして
鈴鹿八時間耐久レースにも出場した経験のある程のバイク通です)

阿部典史(愛称ノリック)選手はロードレース(オートバイ)のレーサーで、
実は「MARS」の零のモデルだった方です。
零の経歴やレーススタイルはこの阿部選手を元に造り上げたもので、彼は当時天才と言われていたレーサーでした。
1994年の日本GPで鮮烈デビューを飾り、この時まだ18歳という若さでした。
まだ十代という事もあって、彼は当時の流行でもあった所謂ロン毛のヘアスタイルをしていて
レース中にメットから出た髪の毛がなびくため、どこにいるのかゼッケンナンバーを見るより
わかりやすかった事もあり、メットで顔が見えなくてもロン毛だとレース場面で描き分けがしやすいという利点も相まって
髪型等も当時参考にさせて頂きました。
(それ以前に、阿部選手はとにかく走り自体が際立っていて、攻めの姿勢を貫くタイプのレーサーでした)

その阿部選手が台湾版「MARS」のバイクの指導にあたっていてくれた事を知り、
改めて驚きと感動と切なさで胸が一杯になってしまいました。
阿部選手は2007年10月7日に公道をバイクで走行中、トラックの無謀運転に巻き込まれ32歳という若さで
この世を去りました。
本当に早すぎる死でした。
鈴鹿には何度か取材に足を運びましたが、生前の阿部選手とは最後までお会いする事はありませんでした。
これまで作品のモデルにしたと公言すれば、御本人にも迷惑がかかる事もあるのではと思い、モデル云々については
敢えて触れずにいましたが、特典映像の子供のように笑っているノリック(阿部典史選手)の顔を見ていたら、
本当に万感胸に迫るものがあり、 今回このような形で御紹介させて頂きました。
改めて阿部典史選手の御冥福を御祈り致します。

また「MARS」最終巻手前にはイタリアのヴァレンティーノ・ロッシ、ブラジルのアレッサンドレ・バロス両選手にも
取材で会わせて頂き、最終回は鈴鹿サーキットでの場面を想定していたので本当に良い経験と思い出となりました。
特にV・ロッシ選手は阿部選手の大ファンだったようで、阿部選手が亡くなった年、
喪章をつけてレースに出場したそうです。
「MARS」は今思えば本当に贅沢な思いをさせて頂いた作品でした。
この場を借りて関係者各位に改めて御礼申し上げます。

ここ十数年程ずっと歴史の資料ばかりを追ってきましたが、去年は縁あっていろいろな方とお会いしたり話したりと
また仕事以外の事を見たり聞いたりして、ある意味大変リフレッシュ出来た年になったと思っています。
年末年始は久しぶりにゲームでもして時間を過ごそうと思い、(文字情報や絵画、資料写真からちょっと離れたくて)
「人喰いの大鷲トリコ」というゲームを購入してみました。

「ワンダと巨像」「ICO」等で知られているシリーズだそうで、「ワンダ」や「ICO」は
うちのスタッフにも長年のファンがいて、彼らが仕事上がりにプレイしているのを、
当時後ろで見せてもらっていましたが、(こちらも大変良作だと思います)
「人喰いの大鷲トリコ」は私が一人でやってみようと思い、今回プレイさせて頂きました。

まず世界観が素晴らしかった事と、主人公と大鷲との交流が実によく出来ていて驚かされました。
絶体絶命の谷から、一人と一匹が助け合いながら脱出を試みるストーリーとなっているため、
否が応でも感情移入してしまう展開は巧妙というか、それ以前にトリコの造詣がとにかく秀逸でした。
大鷲とはいえ、動きはどちらかというと猫に近く、我家の飼い猫アヤも私の隣で終始画面に釘付けになる程で、
リアルでありながら生々しくなく、このバランスが本当に絶妙でしたね。
無機質な遺跡の中で、自然物である草木や光、主人公である少年が対照的に際立つようにデザインされていて
どこか絵本のような仕上がりが本当に美しく、また音楽もとても効果的で本当に感心致しました。
ゲームでありながら一つの物語を辿るような演出に、良い意味で最後まで翻弄されました。
いつもは気分転換でシューティングをやる程度だったのですが、まさかゲームで感動を覚えるとは思いませんでした。

出力ばかりしていると、どうしても精神的に殺伐としてしまうのですが、このように作り手の拘りや
真摯な姿勢に遭遇すると嬉しさも含めて英気を養えた気がします。
やはり良質の感動、刺激は必要だな、と改めて思いました。
私も頑張らなければいけませんね。
今年も一年宜しくお願い致します。