2023年が始まりました。去年はあまりにいろいろな事が起こりすぎて言葉にするのも辛かったのですが、今年こそ世界中に穏やかな日常が戻ってくるよう心より願っております。
そして私事ではありますが私の作品である「チェーザレ 破壊の創造者」が新年早々に明治座で再演される事となりました。再演と言っても三年前の2020年の3月に予定されていた公演はコロナによって直前で中止となり披露することなく凍結されていたので今回が事実上の初演となります。
完成していながら上演されないのは漫画作品が掲載される前に消去されてしまうのと一緒で、その時の喪失感は計り知れないものがあったと思います。なのでこの開幕は関係者の皆様において本当に喜ばしい事であり、私自身もこの朗報を受け大変嬉しく思っております。有難くも明治座さんからの御招待を受け私も今月10日に観劇して参りました。ミュージカルにはあまり馴染がなく、ほぼ初見といった新参者で申し訳なかったのですが開幕から凄まじい迫力で圧倒されっ放しの3時間強でした。(※あくまで初心者の感想ですので至らないところが多いのは御容赦ください)
ロドリーゴ役の別所さん、ローヴェレ役の岡さん、ロレンツォ役の今さんの大人キャラクターの重厚感が凄まじく、その対比とも言える若者キャラクターをチェーザレ役の中川さんを中心に軽やかに繊細にと、このコントラストが見事に演出されていて大変素晴らしかったですね。
チェーザレを挟んでのミゲルとアンジェロの役回りやフランス団のアンリとの関係等当時の世界情勢や政争という堅苦しい空気を若者目線で(大立ち回りも含めて)表現していたのも原作を忠実に再現されていて、とても楽しく拝見致しました。
またリアーリオ役の丘山さんのエッジの効いたラファエーレ・リアーリオを始めフィオレンティーナ代表のジョヴァンニ、ドラギニャッツォ、ロベルトの存在もとてもよく表現されていました。欲を言うとドラギニャッツォやロベルトの身分の差についてもう少しじっくりと見たかった気もしましたが原作の情報が盛りだくさんでこれ以上は本当に至難の業だったと思います。
また圧巻だったのがダンテ役の藤岡さんとハインリッヒ7世役の横山さんでした。このお話を頂いた時、ダンテとハインリッヒ7世を登場させたいと伺ってどうやってチェーザレ達と絡めていくのかちょっと想像できなかったのですが「なるほど」と腑に落ちる形で再現されていてとても興味深かったです。ダンテとハインリッヒ7世がまるで光と影のような存在に描かれていてとても印象的でしたね。
※ピサはウゴリーノの孫を救出したハインリッヒ7世を英雄として称えたことから皇帝党の街となり、教皇庁の人間であるチェーザレが皇帝という存在を意識する切っ掛けとなった場所です。
脇もチェーザレの母親であるヴァノッツァやピサの女性達、また特別出演とでも言うべきレオナルド、コロンブス、ボッティチェッリ、ランディーノ等ルネッサンスを代表する人物達も登場して全員で舞台を盛り上げているようで、その反面どの演者の方もバトルのように個々のキャラクターをぶつけあってるようにも思え、その熱量のせいか3時間を超える公演が短く感じられる程でした。本当に贅沢な時間を過ごさせて頂きました。
元々私の原作「チェーザレ」は漫画としては地味で静かな作品ですので明治座さんからお話を頂いた当初、この作品でミュージカルが成り立つのだろうかと疑問に思ったりもしたのですが、音楽の力を借りる事でここまで華やかに変化するのかとちょっと驚いています。漫画自体は音が存在しない世界ですので、音楽と声の力の凄さ、魔力というものを今回しっかりと教えて頂きました。衣裳も再現率が高く豪華で舞台の視覚効果も素晴らしかったです。
改めまして、脚本・作詞の荻田さん、演出の小山さん、作曲・音楽監督の島さん、オーケストラ他スタッフの方々、またこのような機会を与えてくださった 明治座さんにこの場を借りてお礼申し上げます。